みなさま、明けましておめでとうございます。 2019年。亥年ですね。いのしし。 ということで
2015/03/12(木)
大人になったからこそ面白い映画 「裸の島」編
大人にならないと本当の面白さがわからないことって、けっこうたくさんあるような気がします。
例えばプロ野球の中継や大相撲。あと、日曜の夕方にやってる『笑点』とかも。
そんなものをボーッと観ている親父を見て、幼き頃の僕は「こんなん何がオモロいんやろか?」と不思議で仕方なかったのだけど。
おそらくあの日の親父よりも年上になっているであろう今の僕は、野球にも相撲にも目がない。笑点だって観てしまう。実にオモシロく観てしまう。
大人である。
そして、もう一つ。つい最近、強烈な「オレも大人になったもんだなぁ…」を感じさせてくれた映画があった。これです。
『裸の島』 1960年・日本
監督:新藤兼人 主演:殿山泰司、乙羽信子
『日本の名作映画トップ10』なんていう企画があったら、絶対に名前の挙がる作品ですよね。
モスクワ国際映画祭グランプリを始め数々の映画賞を受賞、世界中の映画人からも評価の高い名作とされています。
瀬戸内海の孤島に暮らす、夫婦と子供2人の4人家族の日常を淡々と描いた作品で、白黒しかもほとんどセリフなしのほぼサイレント的映画。
水道もガスも電気もない小さな島で、この一家は黙々と荒れた崖を耕し農作物を育て、手漕ぎの舟に乗って水を汲みにいく毎日。
別に、何かの制約があってこの島に住まなければいけないということではないようです。実際に家族で島を出て、本土の市街地で買い物するシーンなんかも出てきますし。
でもこの家族は、というかこの夫婦は、どんな辛いことがあってもこの島を離れようとしないのです。どんな不幸な運命に翻弄されようとも。
実はこの映画を観るのは3回目で、1回目はまだ20代半ばの頃でした。
「名作って言われてるから、いちおう観ておくか~」
というようなミーハーな気持ちで借りたのですが、白黒映画でセリフ無し。あまりにも退屈でつまらなく、ほとんど早送りで見飛ばしたのでした。
次に観たのはほぼ10年経った30代の半ばごろ。この時も途中まで見て
「こんな不自由な島なんやから早く出ろや!マゾかお前ら!?」
みたいな。
身も蓋もない感想しか浮かばなかったのでした。
で、そこから更に10年が経って。
ほんと、偶然に観る機会ができたというか、立ち寄った先で上映していて。
もう、最初から最後まで、その場を動けませんでしたね。
よく「画面やスクリーンに吸い付けらるように見入ってしまう」とかって言いますけど、この『裸の島』は違います。こっちから積極的に画面に絡み付いていかないと、何か大切なものを感じ損ねてしまうような気がして。
気がついたときには、あの有名なラストシーンになっていました。
そうだ、若い頃は理解できなかったけど、僕らは結局、それぞれに定められた“孤島”の中から逃げ出せないのだ。
バッターボックスは外せないし、土俵を割ることはできないし、座布団から降りることもできないのだった。辛くても、不運に見舞われても、僕らはみんな目の前の荒れた畑を耕していくしかない。
もしかしたら、この『裸の島』に住む家族は、たとえどこに移り住んだとしても、この孤島で暮らすのと結局はあまり変わらないことを知っているのではないか。もしかしたら、東京あたりから逃げ出して、名実ともに本当のこの孤独な島に、あえて住んでいるのかもしれない・・・
20代30代のころには想像もつかなかったような発見です。ただ単純にトシだけ食ってるわけじゃない。今の自分なら、もしかしたらあの作品についても理解できるようになっているかもしれない…
僕にはもう1作品、若い頃に途中で挫折した映画があります。
それは・・・
これだ!
『地獄の黙示録』!!
正直に告白します。
この映画、絶対に途中で寝てしまいます。
…いや、しかし。これを観ようと挑んでから、もうすでに10年は経っている。
今の僕ならこの映画だって征服できるかもしれない。
待っとれよ、コッポラ!