3年ぐらい前だったか、仕事で山口県を訪れた際、地元のスタッフさんと雑談中、「山奥に“水車の里”っていう、あやしい
2019/02/08(金)
ここだけまだ昭和な、神戸・平野の『伊勢屋』
京都・大阪と並ぶ“三都物語”のひとつ、兵庫県の神戸市といえば
以前に紹介したルミナリエとかベイエリアの夜景とか、夜にピカピカ光っているイメージ?神戸出身の僕からすれば、キレイな街だと思って頂けるのはとっても嬉しいことなのですが。
内心は「いやいや、ホンマはもうちょっと見てもらいたい神戸もあるねんけどなぁ…」という、忸怩たる思いも少々。。。ということで、オシャレなエリアのベイサイドとは全く逆、山側のほうにある兵庫区の平野(ひらの)というところを紹介しましょう。
実は…もう何十年ぶりだろう?行ってみたいお店があるんですよね。
昔は賑やかだったんですけどね…
神戸市兵庫区の平野町というのはこのあたり。
このブログで以前に紹介されている『激ウマポン酢』の平野は大阪市です。関西で『ヒラノ』といえば、だいたい大阪のほうを指す場合が多いので注意を。今回紹介するのは“神戸のヒラノ”です。
…正直、寂れてます。僕が子供の頃は、まだかなりの賑わいっぷりだったんですけどね、この商店街も。
僕も知らない大昔のことなんですが、かつてこの辺りは神戸市電(路面電車です)の平野線という路線のスタート地点だったそう。僕が生まれ育ったのはお隣の長田区というところだったんですが、父親の仕事の関係か何かで、幼い頃はよくこの平野商店街に連れてきてもらってました。
稼ぎ時のはずの夕方にもかかわらず、シャッター閉まりまくり。
おお!この雑貨屋さん、まだ残っとーやん!
今どきバケツに入った『スライム』を誰が欲しがるのか?
これは別のお店のポスター。
13日(取材は2018年末)は渡哲也さんの誕生日ということで、サングラスを着用して来店すればポイント2倍!兵庫県出身でも、たしか淡路島じゃなかったっけ渡さん。平野には縁もゆかりもなかったと思うのだけど。
昭和30年代ごろは「朝と夕方はまっすぐ歩けないぐらい人で溢れていた」なんてことを聞いたことあるのですが。電車が無くなるだけで、こんなにも寂しい雰囲気になるのか…それでも、僕らの子供の頃はまだ「平野(商店街)に買い物行こか?」みたいな感じだったんですけどね。
とにかく、人が歩いていないんですよね。人っ子ひとり歩いていない路地を縫うように歩きつつ。ごくたまにすれ違うのはほぼ100%お年寄りばかり。大丈夫か?
最初にちょっと書いた通り、この平野商店街近くに『行きたいお店』があるんですよね。食べ物屋さんです。まあ、開いている店もちょこちょことあるのですが、あのお店はどうなんだろうか??
心配しつつ、路地を折れ曲がり、薄い記憶を頼りに歩いて行く…
おおおおおー!あったあった!!まだ残ってましたよ、伊勢屋(いせや)!!
まるで、つげ義春的世界観。これが今回の目的のお店、
伊勢屋です…隣の家のドアの壊れ具合や、ピンクのランドセルを背負って歩いているアニキも注目ポイントですが。
ボロさというか、やつれた感は増していますが、基本的なフォルムは昔のまま。
ガーデンカフェを思わせる、実にロハスな窓辺。
家に帰ってからネットで調べてみたら、うどん屋さんとして紹介されていることが多いみたいですね。僕が子供の頃には大衆食堂というか、なんでもあるような、今でいうファミレスみたい?いや、それは言い過ぎですけれど…看板にもうっすらと『うどん・寿し・中華』の文字が(もうお寿司はやってないみたいですけれど)。
でも確かに、うどんや丼物が特に美味しかった記憶があります。
ノレンもちゃんと出ているではないか!中に電気も付いているし。風で飛ばされてきたボロ切れか何かが引っかかっているだけに見えますが、れっきとしたノレンです!間違いなし。
圧倒的な昭和っぷり…はっきり言って、“一見さん”はメッチャ入りづらいと思います。僕も大人になってからは初めてです、たしか。勇気を振り絞って入店。
そーそー、こんな感じでしたよ昔から。まるで自宅のリビング。ほぼ『相席』がマストの席数。神経質な方は入れないお店…いや、入らないというか近寄りもしないと思うけど。
知らんうちにタイムマシンでも発明されたのかと錯覚してしまう雰囲気…でも、座布団はなんかオシャレな味わいです。
左側にチラっと見切れているのが、この伊勢屋の大将。「顔写真?なんや照れくさいワ、かんべんしてぇな。」と笑顔のロマンスグレー。お店はこんな雰囲気ですが、大将は実に気さくで話しやすいお方です。
窓ガラス、ヒビ入ってますねと指摘すると、「それなー、もうこれと同じような摺りガラス作れる職人がおらへんらしいわー、しゃーないねん!」だそう。そういえば、最近このテのガラスはほとんど見かけなくなりましたよね。
おおー、岡持ちや!金属の、縦にフタというか扉を閉めるタイプのものはまだ見かけますけれど(ケンドンっていうやつ)、
こんな、木製の岡持ちなんて見るの久しぶり!しかも年季入りまくり。
僕が興味示しまくっていると、サービス精神満点の大将は
「昔はな、サランラップなんてあれへんかったからな。こないしてフタを2枚重ねにして出前してたんやで。」
「冷めへんようにと、おツユこぼれんようにな。」と実演してくださる。なるほど!勉強になります。
やはり“しのだうどん”を!
見るものすべてが懐かしく、そして新鮮なのですが、写真ばっかり撮っていても仕方がない。やっぱりメシ屋に来たら食べないと!
これまた年季入りまくりのメニュー表。タバコのヤニかなんかでほとんど見えませんが、心配ご無用。どれもだいたい500円以下ぐらいのワンコイン安心価格(※ただし、これは2018年末の価格表です…が、大将曰く「ここしばらく値上げしてへんなー」ということなので、当分はだいたいこのぐらいの値段かと)
たしかに、うどん中心のメニューになっていますね。いろいろ悩んだあげく…
しのだうどんを。きつねうどんのことです。最近はあまり見かけませんが、昔はうどん屋さんのメニューに普通に「しのだ」って書いてありました。たぶん関西だけの方言でしょう。
上方落語や人形浄瑠璃、昔話などで有名な『葛の葉子別れ』-ある男性と、人間の女性に化けた女ギツネが、大阪の信太(しのだ)の森で出会い、夫婦になるお話。これが元になって、“キツネ→油揚げが好き→しのだ”になったと聞いたことがあります。なので、方言というよりもシャレみたいなものか?
ちなみに、話は少々オカルトっぽい方向にズレますが。この、女性に化けた女ギツネ(葛の葉)が稲荷神社の狛狐であり、そして、男性との間に生まれた子供が陰陽師の安倍晴明だという説も…
まあ、そんなこと言うてたら、うどんが伸びてしまいますね。早く食べないと!
このお揚げさんよ!おっと、あまりのアツアツに、レンズが湯気で曇ってしまったですよ!!甘辛く味付けされた油揚げ、最高です。関西のうどんにしては、ダシも少し味が濃い目か。でも、それがいいです。うどんをオカズにゴハン食べられる感じの下町テイスト。でも、それでいて、“うま味”もしっかりと感じ取れます。
なによりも、このお店『伊勢屋』がまだ残っていたことが素晴らしいです。阪神・淡路大震災にも耐えて、まだまだ現役。平成も間もなく終わろうというのに、この昭和の美貌よ!
「けどなぁ、ワシももう歳やし。この辺も人通り少なぁなってきとるしな。この店、いつまで続けられるか…」って、そんな寂しいこと言わないでくださいよー!!またコッチ帰ってきたら寄してもらいますし。
そんなことを言いながら、お店の外観をパシャパシャと写真撮っていたら、どこからともなくやって来た、
ネコ。ここが定位置?ちょこんと座って。
お店に戻って大将に尋ねてみたら、「あー、ドラネコやろ?どっかから迷い込んできてん。この商店街じゃ、ちょっとした人気モンやで」と…飲食店にネコって、じゃりン子チエか!?この辺も、いかにも関西の昭和の風景っぽくてステキすぎるのでした。