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2015/04/13(月)
映画で見る『バンドブーム』 (その2)
『グミ・チョコレート・パイン』(2007年公開)
監督・脚本はケラリーノ・サンドロヴィッチ。
出演は石田卓也、黒川芽以、大森南朋。
40代を目前に会社をリストラされてしまった賢三(大森南朋)は、久しぶりに帰った実家で、高校時代の同級生だった美甘子(黒川芽以)から届いていた奇妙な手紙を受け取る。不思議に思った賢三は、かつてのバンド仲間たちに連絡を取り、美甘子のことを尋ねる。彼らから返ってきた答えは「美甘子は数年前に死んだ。しかも自殺である」というものだった…
原作は『筋肉少女帯』『特撮』などでおなじみの大槻ケンヂ、監督・脚本は『有頂天』のケラリーノ・サンドロヴィッチという、バンドブームを盛り上げた人たちによる青春群像劇です。
原作が大槻ケンヂの自伝的要素をかなり含んだ小説なので、この映画も『当時の若者たちがどのように集まり、なぜ表現方法として“ロック”を選んだのか?』という部分が濃密に描かれています。
いちおうロック映画であり、バンド活動がストーリーの重要な部分を占めてはいますが、テーマは“青春のモヤモヤした想い”という感じでしょうか。友情、恋、将来への焦燥感…誰もが経験するような、経験不足でデリケートな青春時代のお話なので、バンドや音楽に興味のない人にもオススメできる、映画としての完成度も高い作品だと思います。
ただ…冒頭のナレーションでも語られているのですが、普通の青春映画のようにケンカしたりナンパに明け暮れたりというような、スカッとした爽快感はありません。ひたすら中二病が続くといった、かなり暗めな内容ですのでご注意を。
余談ですが、高校時代の賢三たちを大きく変えるキッカケとなったノイズパンクな『自分ボックス』というバンド、あのバンドのモデルは一体何なんでしょうか?
個人的には『突然ダンボール』ではないか?と思うのですが、どうなのでしょうか?
『ROCKERS(ロッカーズ)』 (2003年公開)
監督は陣内孝則。
出演は中村俊介、玉木宏、岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史。
70年代終盤の日本のロックシーン。地方都市の福岡・博多でも様々なビート系アマチュアバンドたちが、それぞれの勢いを競い合っていた。その中の一つ、ボーカルのジン(中村俊介)率いる『ロッカーズ』は、煩わしい日常を吹き飛ばすかのようにライブ活動を続けるも、やがて音楽的な限界を感じ始める。そんな彼らの前に、超絶テクニックを持つ天才ギタリスト、タニ(玉木宏)が現れて…
俳優としておなじみの陣内孝則がかつて組んでいたバンド『ロッカーズ』の自伝的映画です。
正確に言うと、彼らが活動していた時代はまだバンドブーム前夜であり、このコーナーの趣旨には合わないのですが、当時の“地方都市におけるロックの状況”がかなりリアルに描かれているので、あえてここで紹介しました。
インターネットのおかげで、今では東京の最先端の文化がアッという間にコピー&ペーストされるのですが、70年代~90年代初頭にはそういう訳にもいかず。
雑誌やフリーペーパー、噂話などを頼りに「こんな感じかな?」と、それぞれの地方で勝手に解釈し、それが結局はバンドブーム時の音楽性の多様化に繋がっていったのだと思います。
この映画『ロッカーズ』での見どころは、ずばりライブのシーンでしょう。ステージ上での中村俊介や玉木宏らの演奏シーン、これがとてもカッコよくて、完成度も非常に高いと思います。このあたりはさすが陣内監督。彼のバンド愛・ロック愛が感じられます。
そして、これは陣内監督の人脈なのでしょうか?小さい役にもとんでもないキャスティングが。小泉今日子や大杉漣、中井貴一に佐藤浩市などなど…個人的にはTHE MODSやルースターズというような“めんたいロック”な仲間たちが出てくれたらと思ったのですが、やっぱりそれは無理だったのでしょうか?
まとめ
いかがでしたでしょうか。ほとんどの作品が、監督・脚本または原作にバンドマンがクレジットされていますね。ロックに対しての“愛”がないと描ききれない世界なのかもしれません。
いわゆる“ロック映画”を楽しむためには、ある程度の音楽知識が必要だったりする場合も多いのですが、今回は予備知識がなくても普通に楽しめそうな作品を選んでみましたので、もしレンタル店で迷った時などに参考にして下されば幸いです。