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2017/09/12(火)
最強“縁切り”スポット『安井金比羅宮』 【前編】
「友達いっぱいほしいなぁ」とか、「彼氏・彼女がいればなぁ」なんて思ったりして。 “縁を結ぶ”というものにはタイミングもあるし、これがなかなか難しいものです。見渡せば、身の回りにはこんなにも大勢の人がいるというのに。
しかし。ある程度トシを食って、いろいろと人生経験を積んだ方なら共感していただけると思います。
実のところ、人生において本当に難しいのは、『いったん結んだ縁をキレイに切る』ということ。どちらも傷つかず傷付けず、美しい思い出を残したままサヨナラできるなら…ああ、“キレイに別れられるアプリ”とか、どこかでダウンロードできないかなぁ?
街のど真ん中にある神社
京都の東山区。
八坂神社の近く。バスの車窓から慌ててスマホで1枚。美しいです、祇園さん。
東京の人などといっしょに京都観光したりすると、よく、「えーっ!?京都って、もっと静かで和の風情があって、そして川が流れていたりする街なんじゃないの?」って、
それ、嵐山とか、左京区の一部とかのイメージなんじゃない?
関西人にとっての京都って、けっこういつでも道路が渋滞していて、細かい路地が多くて、あまり背の高くないビルやマンションが並んでて、そして、意外とコワモテな人が多かったり…
コンビニなどの、派手で目立つチェーン店が、かなり地味な装いでひっそりと佇むという、そんなイメージだったりします。
そして、そんな雑然とした街並みに溶け込むかのように、違和感もなにもなく、しかし、さりげなく威厳ありげなオーラをまとう、由緒正しい神社やお寺が多数存在している―そんな不思議な空間でもあります、京都って。
渋滞している大通り沿い、立ち並ぶ住宅や雑居ビルの間に突然現れる鳥居。木造ではなく、石造り。柱が四角い“住吉鳥居”というタイプのもの。あまり見かけない形の鳥居です。
そしてそして、『悪縁を切り良縁を結ぶ祈願所』という文言が何よりも目を引く…
ここが、日本最強の縁切り神社の呼び声も高い、安井金比羅宮(やすいこんぴらぐう)なのです。
最強たる所以
この安井金比羅宮には三柱の神さまが祀られているのですが、一番有名なのは崇徳天皇(すとくてんのう)でしょう。
死後、自分を陥れた役人達を落雷で撃ち殺したといわれる“学問の神様”菅原道真、大正そして昭和になってまでも、首塚を壊そうとした者が不審な死を遂げるという平将門。彼らと並び『日本三大怨霊』の一人に数えられるのが、“崇徳院さん”こと崇徳天皇。
都での権力闘争に敗れ、讃岐国(今の香川県)に島流しにされた崇徳天皇は、そこでもさまざまな仕打ちを受け、失意はやがて憎悪に。自ら舌を噛み切り、悪魔になって朝廷に災いなすと誓い、そしてその通りに、京の都には原因不明の数々の不幸が。
平氏・源氏、そしてその後の戦国~江戸時代と、長く続いた貴族社会が武士にとって変わられたのも、この崇徳天皇の怨念だと言う人さえいるほどです。
もう一柱の大物主神(オオモノヌシノカミ)は、以前紹介した出雲大社のオオクニヌシとも縁の深い、強い力を持つ神話の神さま。水を操る龍の化身とも言われ、人間の愚行を落雷などの天変地異で戒める“怒り神”としても知られる存在。
そして、残る一柱の源頼政公は、京の都を恐怖のドン底に陥れた謎の怪物“鵺(ぬえ)”を射倒し、八つ裂きにして海に流したという伝説を持つ剛毅なお侍さん。刀剣乱舞好きには、獅子王が言うところの「じっちゃん」としておなじみでしょうか。
こんな恐ろしい三神が祀られている神社ですから、その霊力たるや…日本中に数多く存在する『縁切りスポット』の中で、この安井金比羅宮が“最強”といわれるのも納得でしょう。
小さな神社の参道で
鳥居をくぐり、参道へ。最強縁切り神社と呼ばれ全国的にも有名な安井金比羅宮ですが、実はとっても小ぢんまりとした、そう大きくはない神社です。
参道を歩いていくと…おおお!境内のすぐ隣にあるもの、これは、ラブでラブラブが過ぎる人たちの秘密の隠れ宿ではないか!?休憩3000円かぁ。
縁切りスポットのすぐそばにこんなものが!と不審がる方もおられると思いますが、崇徳天皇は日本三大怨霊の一人に数えられると共に、百人一首の『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ』の作者としても有名です。
歌の意味は省略しますが、深い深い愛の歌です。ラブソングです。怨霊としての一面がピックアップされがちですが、本質はむしろ“愛の神さま”だと、個人的には思うのです。
日常生活の中に寺社仏閣が溶け込んでいるのも京都らしいですし、この景色、いかにも崇徳院さんの愛に満ちた懐の中という感じで、すごくステキだなぁと思ったりもします。
参道をさらに歩いていくと、こんなものも。
いろんなタレントさんが描いた絵馬が並んでいます。
2015年にお亡くなりになった、桂米朝さんの呼びかけで集まったものだそう。ここ安井金比羅宮は、今も定期的に米朝一門の落語会が開かれていることでも知られています。
6代目笑福亭松鶴さんの絵馬。仁鶴さんや鶴光さん、鶴瓶さんたちのお師匠さんでもあります。『禁酒・3日間』の言葉。禁酒、たった3日かい!?という、いかにも破天荒で有名だった方らしい、ステキな絵馬です。
これまた破天荒な、横山やすしさんの絵馬。たぶんボートレースのことを書いていらっしゃるのでしょう。
桂ざこばさんはまだ朝丸時代の絵馬。
そして、“上方落語の爆笑王”桂枝雀さんの絵馬も。小林一茶の俳句『蝸牛 そろそろ登れ 富士の山』…話芸と笑いを突き詰めるあまり心の病に陥ってしまい、自ら命を断ってしまうことになる枝雀さんの、これは自分自身に言い聞かせるための言葉でもあったのでしょうか。
枝雀さんの持ちネタだった古典落語の『崇徳院』も、“瀬をはやみ~”の歌が若い男女を結び付ける、今でいうドタバタラブコメディ的な噺。特に枝雀さんバージョンの『崇徳院』は優しく、そしてラスト(サゲ)も愛に満ちています。そのせいもあるのでしょう、本当に個人的には『崇徳天皇=慈愛に満ちた優しい神さま』というイメージなのですが。。。
“縁切り縁結び碑”が目の前に!
『日本最強の縁切りスポット』などと言いながら、崇徳院さんの優しい愛に想いを馳せつつ、
何度も書きますが、この安井金比羅宮の境内はそう広くはありません。参道もそう長くはありません。でも、とっても綺麗なんですよね。心が洗われるような、リセットされるような。
確かに、何かしらの「新しいスタート」を切れそうな、そんなワクワク感に満ちたような参道を進んでいくと、
すぐ目の前に、何やら白い塊りが。お札のようなものが大量に貼り付けられています。これを見ると心が引き締まるというか、緊張?いや、むしろ、戦慄という感覚に近いかも?
この碑の下の方にある、黒くぽっかりと開いた穴の中を潜ると、たちどころに望まぬ縁が切れてしまうという。。。この白い小山のようなもの、これが有名な『縁切り縁結び碑(いし)』です。
(つづく)