前回は昭和7年(1932年)の『尋常小学・夏期学習帖』を紹介したのですが。 実はもう1冊、古本屋さ
2017/04/18(火)
桜いろいろ【後編】-幻のサクラも
日本に植えられている桜の80%以上がソメイヨシノという品種なのですが、
そのソメイヨシノは、このエドヒガンと、オオシマザクラという二つの品種を交配させて作られたものだそうです。
せっかくなので、もっと近付いて花びらの特徴を伝えたいところですが、
ご覧の通り、山奥にある古木の一本桜。
倒木の恐れがあるのか、ロープが張られて近寄れません。
でも、このような古木になるのもエドヒガンの特徴のひとつ。樹齢2000年といわれている山梨県の『神代桜』や、山の神々が宿ると言い伝えらている兵庫県の『樽見の仙桜』などもエドヒガンなのだそうですよ。
ここは麓から30分も登らなければいけない山奥だったそうで、しかも仕事の合い間だったし、わざわざ望遠のレンズも用意してないし…
もっと近くで花びらの様子を見てみたかった…なんて、言い訳をしなくていいのがサクラの良いところ。
あたりを見回して、地面に落ちている花びらを手に取ればいいのです。
ソメイヨシノよりも、花の大きさは小さめのようです。そして、このエドヒガンのいちばん分かりやすい特徴は、花びらの後ろ側が赤くプクッと膨れているところ。
これは別の場所で撮った、シダレ桜の代表格ベニシダレ(紅枝垂)ですが、これも花びらの根元が赤く膨らんでいますよね。これもエドヒガンを品種改良して作られた桜の一種です
今回は山奥に咲いている、おそらくは樹齢600年を超えているとされる古木のエドヒガンを紹介しましたが、
実は、エドヒガン自体はそう珍しい桜ではありません。ソメイヨシノに比べれば数は少ないですが、公園や河川敷などでも見ることができます。
周りよりもちょっぴり花びらが小さいめの桜を見つけたら、花の根元を見てみてください。赤く膨らんでいたら、それはエドヒガンかもしれませんよ。
オオシマザクラも
冒頭で『ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラから作られた』と書きましたが、じゃあもう一方のオオシマザクラ(大島桜)は?というと、
こちらです。木の形や大きさなどは、ほとんどソメイヨシノと変わらないですね。ただ、花が付く時期が少し早めの場合が多いそうです。
なので、写真を撮ったときは、もうほぼ葉桜状態。。。ちょっと遅いよ!なんて怒らないでください。実は、オオシマザクラはこの葉っぱにも大切な役割があります。
みなさん一度は口にしたことがあるはずの桜餅。おモチを茶色い木の葉で包んだあの和菓子に使われているのは、このオオシマザクラの葉を塩漬けにしたものです。
オオシマザクラの葉っぱに多く含まれているクマリンという成分が、桜餅のあの芳醇な香りの元になっています。
しかも、クマリンには強い抗菌作用もありますので、葉っぱが天然の保存料になっているということ。安心して桜餅を食べることができるのは、このオオシマザクラのお陰でもあります。
花の形や付き方、枝や幹の模様はソメイヨシノとよく似ているでしょう?島国である日本に元々から自生していた桜なので、潮風にも強い丈夫な品種。ソメイヨシノはもちろん、国内に600種類以上といわれている桜のうちの多くが、このオオシマザクラを品種改良して作られたものだそうですよ。
幻のサクラ
では最後に、とってもとっても珍しい桜を。
日本人でも、おそらくはほとんどの人が目にしたことがないと思います。
この日は天気もイマイチ、しかもちょっと葉桜がちになってしまっていますが、真ん中の白く見える桜。
右の隅っこにチラっと見える桃色の桜は、おなじみのソメイヨシノ。見比べてもらうと分かるとおり、この桜は花びらが白色です。
純白というよりも薄い緑色が乗っかっているような白。清潔な感じはしますが、白い桜自体はそう珍しくないですよね。
しかし、近寄って見てみると…花の形はソメイヨシノと違わないですが、外側にある萼(がく)が緑色をしています。
これはミドリヨシノという品種で、ある文献によると『国内に2本しか確認されていない』とされている、とっても珍しい桜なのだそうです。
こちらはおなじみのソメイヨシノのアップ。見比べれば、なんとなく萼の違いが分かってもらえるのではないでしょうか?
桜は挿し木でも増えるので、実際のところはもう少し本数があるんじゃないか?とも思ってしまうのですが…それにしても恐らくは国内に数本しか存在しない“幻のサクラ”であることには違いないでしょう。
まあ、そんな面倒くさいことは考えなくても、このミドリヨシノの美しさは別格。
舞い落ちた地面の花びらさえ真っ白で、踏むのをためらってしまいます。
狛犬を挟んで左にミドリヨシノ、右にソメイヨシノ。本当はもっと天気が良ければよかったんですけどね…でも、そう贅沢は言えません。
このミドリヨシノは本来、3月下旬に見ごろを迎える早咲きの桜です。今年は春の訪れが遅かったせいで、こうやって揃い踏みを見ることが出来たわけでもありまして。
滅多に見れる桜ではないのですが、機会があればぜひこのミドリヨシノの美しさを堪能してもらいたいと思います。
手折ってはいけません!
SNSなどに画像をアップする機会が増えたせいもあるのか、お花見客が邪魔な桜の枝を勝手に折ってしまうケースが増えている―というのを耳にすることがあります。
日本列島の厳しい気候の中でも自生していたのですから、桜はとても丈夫な樹木である反面、傷にとても弱い植物でもあるんだそうです。
園芸好きな人たちの間では「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という格言があるそうで、桜の木はちょっとした切り傷からもバイ菌が入って、木全体を枯らしてしまうことが多いのだとか。
プロの植木職人さんでも剪定や枝落としには細心の注意を払うのだそうです。
許可無く木の枝を折ることは犯罪(みんなの税金で維持されている公園にも『環境法』や『自然公園法』などが制定されています)ですし。
来年もまたお花見を楽しみたいのであれば、桜は手を触れず、少し離れたところから写真を撮ったり愛でたりするのがいいと思うのです。